魚の個体群の空間分布は何によって制御されているのか?

トロムソにあるノルウェーの海洋研究所のベンジャミン・プランク氏、IFREMER(フランス海洋開発研究所) 魚類資源研究室のクリストフ・ルート氏らが魚類個体群の空間分布の複数のモデルを比較し統合するフレームワークを提唱する論文を発表した。共著者のピエール・ペチトガス氏は ICES Journal of Marine Scienceで100件以上引用されている音響探索と空間統計についてレビューを行い、サンドリネ・ヴァズ氏もQuantileRegressionを用いた空間分布の解析など引用数は多くないものの、空間データ解析屋さんたちのようである(リンドストーム氏はうまく検索できず)。

彼らは、魚類の個体群の空間動態を個体群の内部と外部の双方での相互作用と捉えて、分布の説明と予測を試みる方法を比較し、より包括的なフレームワークを提唱しています。

従来のモデルとして、広域分布を説明するために近年用いられている種の分布モデル(SDMs)が分布を環境の関数と捉える静的なものであるのに対し、魚類の個体群で良く用いられる動物の行動モデル(MAMs)では群れが内的・外的双方に規定されるような動的な仮定が組み込まれています。そのため、種や個体のレベルではなく、個体群のレベルでモデルの仮説が意味なすように個体群分布モデル(PDMs)が必要としています。そのモデルとは以下の仮定に基づく静的なモデルで、それぞれをレビューし、対応する従来のモデルを比較したのが本研究の重要な点です。1)地理的性質を介した制御。2)環境の条件。3)密度依存の生息地選択。4)空間依存性。5)個体群構造。6)種間相互作用。7)個体群の記憶(時間遅れ)。

その結果、これらのモデルは相補的なもので競合しないこと、異なる仮説に基づく数理モデルを組み合わせたものは従来少ないことから、PDMsとして提唱する一般性のあるフレームワークの中に構築されるべきと主張しています。メリットとしてはモデルの評価や比較、複数の仮説の組み合わせを可能にすること、その結果、予測においてどのモデルの不確実性を考慮すべきかがわかり、精度向上や、包括的理解を促進することです。

・・・結局、モデルアベレージングとかモデルの比較対戦させるということか?

Fisheries Oceanography IF=2.427; H index=45

Understanding what controls the spatial distribution of fish populations using a multi-model approach
BENJAMIN PLANQUE1,*, CHRISTOPHE LOOTS2, PIERRE PETITGAS3, ULF LINDSTRøM1, SANDRINE VAZ2
DOI: 10.1111/j.1365-2419.2010.00546.x