福島原子力発電所の事故にともなう、食品の出荷制限と食品の放射性物質の量についての近況

福島沖での操業は震災後に一時的になくなり、漁獲統計も一部で途絶えていますが、現在どうなっているのかについて、問い合わせを受けたので、公式な情報を以下に羅列しました。

水産庁のサイト
http://www.jfa.maff.go.jp/j/housyanou/kekka.html
こちらで検体ごとの数字が公表されています。
「これまで109,448検体の水産物放射性物質調査を行ってきました(平成29年5月29日現在)。調査の結果、基準値(100 Bq/kg)を超える割合は事故からの時間の経過に伴い低下してきており、特に福島県においては、平成23年4-6月期には基準値を超える割合が53%となっていましたが、平成27年10-12月期では0.1%まで低下しました。」
とのことで、ほとんど基準値を超える海産の水産物は出ていないというのが現状です。3年前くらいまでは根付きの魚などで、まれに外れ値のように高いものが出るのがなんだのだろうという話を聞いたことがありますが、そうした状況も徐々に改善されている模様です。どういうわけか、長距離の移動をすることもあるのですね。それ自体は生態として興味深いです。

実際に福島県の試験操業対象種の放射線量の測定結果の時系列変化を見ると、アイナメなどの根付きの魚やエイ・カレイ類などの底魚で比較的高い値から徐々に減少して近年ぼぼ基準値以下となっていますし、沿岸の魚種などは種によってだいぶパターンが異なり興味深いです。また、浮き魚でも栄養段階が高いもののほうが値も相対的に高くなっています。

試験操業対象種ごとの放射線量の測定結果の時系列変化
http://www.fsgyoren.jf-net.ne.jp/siso/buhin/20170201taisyousyu.pdf

放射性物資のの起源が何なのかというメカニズムや今後の予測の検討に必要な、餌生物や土壌の測定を同時に行っていなさそうである点が残念です。




さて、こうした状況を背景に、試験操業を開始しているわけです。

そもそも試験試験操業とはなんなのでしょうか?以下の福島県のサイトに状況が記載されています。

福島県のサイト:ホーム > 農林水産業 > 試験操業の状況
試験操業の状況 http://www.pref.fukushima.lg.jp/site/portal/list274-860.html

小規模な操業と販売により出荷先での評価を調査するもので、「販売される漁獲物は福島県漁連が中心となり、放射性物質の検査を行っています。万が一にも国の基準値である100Bq/kgを超えるものを出荷しないようにするため試験操業においては、自主基準を50Bq/kgとしています。」とあり、要するに検査をやりながら小規模な漁獲と出荷を行っています。

対象は、以下にあるとおり、現在では特定の種を除くすべてです。

* 「平成24年6月に3魚種を対象に始まった試験操業は、毎週200検体前後のモニタリング検査結果により安全が確認された魚種が対象として選定され、平成29年1月までに97魚種が対象となりました。
* 平成29年3月に、福島県漁業協同組合長会議において、平成27年4月以降のモニタリング検査で基準値を超える魚種は認められず安全が確認されていることから、出荷方針が改正され、試験操業対象種の表記が「すべての魚介類(出荷制限魚種を除く)」に変更されました。」


なお、水産物以外については、以下のサイトに出荷停止などが記載されています。
ホーム > 水・食品等の放射性物質検査 > 農林水産物
農林水産物
http://www.pref.fukushima.lg.jp/site/portal/list280-889.html

これを見ると、キノコ、川魚、山菜などがまだかなり出荷停止になっているようです。
個人的にはキノコが濃縮することはよく知られていますが、流れて集まる先である川の生物でまだこれほど高いという点は割と盲点だったのではないかと思います。また、山菜についてはどういうメカニズムで高いのかすぐに理解できないです。山菜の新しい芽にそれほど濃縮するものなのか、森林で樹皮に放射性セシウムの高い値が見られたようなので、そうしたものが表層の土壌となってまだ林内でそこそこ高いのか、よくわかりません。ここでも、食品以外を同時に調べていないので、判断がつかないです。こうした調査は各県の試験場などでやっているわけですが、意識の高い職員がいたり、大学などの研究者が入っていればそうしたものを調べているのかもしれないですが、情報はありますかね。

それはそうと放射性物質の除去をうたってキノコを育てて濃縮するというのは成立するのだろうか。