すでに侵入した外来種にどう対応すべきかは難しい。

 あまり雑感的なものはBlogに書かないほうが良いのかもしれないと思いましたが、土壌中のナガミノヒナゲシの種をひたすら数えたことがあって懐かしいのでちょっと最近話題のナガミノヒナゲシ駆除のPRについて、主に都市部の方向けに書いてみます。


自然保護を目的とした地域でもない場所でナガミノヒナゲシ駆除の話しを聞いたときに、ちょっと過剰反応ではないかとおもっていたところ、案の定、議論になっているようです。(https://www.facebook.com/permalink.php?story_fbid=831257117022464&id=100004145498743&pnref=story)。多感作用が他の多感作用が強い植物同様にあり、拡散を防げるのであれば防いだ方が良いのは間違いないようですが。現実的に既にほかにも特定外来生物や侵略的外来種に指定されている種がすでに蔓延している都市部で、特別な目標を定めずに優先して駆除する対象とすべきかどうかが不明である点と、告知がちょっと扇動的ではないかという点が疑問です。
 在来の植生の維持を目指そうという個人が他の外来種とともに個人で 駆除し、在来種の種を播種することや(ただし国内移入を防ぐために同じ地域内で採られたものとするなど注意が必要)、もし組織的に行うのであれば、新たに在来の植物群落を保全・復元する場をこれを契機に設定するというのは、あっても良いかと思いますが。多くの場合は外来種が生育しやすい環境があり、もともとの表土の質やシードバンクの組成が失われているという問題も大きいと思われます。

 ただし、埋め立て地のような都市域においても在来種を含めた植物群落について、「保護すべき固有種や生態系が陸上に存在するかどうか」については、既に相当量が破壊されていますが、まだあります。
例えば、埋立地で有名な浦安市においては「平成18年度自然環境調査(春季・夏季・秋季)業務委託報告書(http://www.city.urayasu.lg.jp/shisei/johokoukai/houkoku/toshikankyo/1002892.html)」をご参照いただければ、いくつか希少種も出現していますし、拙著「新浦安から伝える東京湾の海辺「三番瀬」(https://calil.jp/book/4990773705)」でも、過去から現在までの希少種の出現について一部で紹介しています。移動可能な動物が希少種では多いですが、植生も埋め立て時の土砂や周辺から加入した海浜植物や湿地の植物が再生した群落もありますし、空き地にシードバンクから出現しているものもいるようです。こうした場所について、環境保全する地域や、復元する場所(ビオトープ)などとして範囲を特定して、元々いた植生の復元や、他の特定外来生物https://www.env.go.jp/nature/intro/1outline/list/#sho)や、侵略的外来種(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E4%BE%B5%E7%95%A5%E7%9A%84%E5%A4%96%E6%9D%A5%E7%A8%AE%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%88100)を含めて、積極的に駆除するという選択肢はあっても良いかもしれません。

余談ですが、埋め立て地の植物群落については、「江東区の野草」 シリーズと(http://www.city.koto.lg.jp/011501/kuse/profile/shoseki/5396.html)、「 千葉県臨海開発地域等に係る動植物影響調査」シリーズ(http://ci.nii.ac.jp/ncid/BA61215831)が面白いと思います。あまり出回っていませんが埋め立て地の植生に興味を持たれた方は、現場を見る事と合わせてぜひ参照いただけると良いと思います。

もともとの自然の植生を維持しようという、原理主義的な立場からは外来種は悪者です。そうした理想的な原理原則に従わなくとも、天然記念物や国立公園の特別保護地区に準じた管理を期待される地域とその周辺では徹底的に駆除すべきだと思います。侵入初期にも駆除は可能ですから、特に島国である日本は入れないこと、初期に排除することをまず徹底すべきです。
しかし既に完全に侵入して定着しまったものについては(地域間の移動を制限できるかという議論はあると思うが)、外来種にも、侵略的なものとそうでないものもいますし、そもそも在来種が生育できない環境条件を人間が整備してしまっていて、植生がないよりは外来種でも生育したほうが表土の保護や生産性、食物網の維持のために良い場合もあるほか、侵入初期でなければ一度定着したものの駆除はほぼ不可能という問題、さらには教育上駆除をどう考えたら良いのかという問題もあるので(そもそも別の目的で導入したものであったり、大型の動物の駆除とか抵抗ありますよね、僕は植物も抵抗ありますが)、駆除せよというのは簡単ですが、社会問題としてどのように対応したら良いかというのは、一概に言えず難しいところです。そうはいっても最近はマングースなどの特に侵略的な外来種はきちんと時間とコストをかけて、科学的な助言も受けて駆除を行ったうえで、限られた島では根絶を達成できそうです。(正直、動きののろそうで大型のヤギなどはともかく、マングースなんてネズミみたいなものかと思っていたので、根絶できそうと聞いて驚いています。)そうした理想的な、例外もあることから、(駆除できることが分かった以上、駆除したほうがいいが、どこまでコストをかけるのかといった部分も含めて)どう対処すべきかますます判断が難しくなったと言えます。

そういうわけで、事前の侵入候補への対策の準備と、検疫強化と、水際対策が最も外来種施策として重要ではないかと思っています。


(「ただし、・・・」以降のように、結論を強く主張せずに両論併記的に書きがちなので、どっちつかずになってしまうのでやっぱり雑感にすぎないなぁ。)