重要海域、EBSA(生態学的または生物学的に重要な海域)とは

EBSA論文(http://d.hatena.ne.jp/yamakita-lab/20170420/1492581486)がようやく通ったので、EBSAについてそもそも何なのかを少し説明いたします。


 生物多様性条約の10回目の締約国会議(COP10)において2020年までの目標を定めた愛知目標では、陸域の17%、海域の10%の特に重要な地域が効果的に保全されていることというものが、数値を掲げた目標として、広く取りざたされている。
この条文には保護区設定の条件として重要な場所を選定することなどが明示されており、その基礎資料として、重要な海域の特定が欠かせない。

 このような保護区の検討と並行して、直接保護区の検討対象とするものではない科学的な検討として、重要な海域の特定方法が検討された。COP10の1つの前の締約国会議(COP9)や、条約の準備会合(SBSTTA)、G7で主に検討がなされ、その結果は、生態学的または生物学的に重要な海域(EBSA)と呼称され、7つの選定基準が示されている。例えば、固有性や、生物多様性、生産性などである。このうち1つでも高い評価がなされれば基準に合致することになる。
 EBSAは元々、公海上の重要海域選定を目的としたものだったが、生物多様性条約では条約締約国のEEZまでを取り扱うとし、EBSAによるEEZの延伸などの思惑はあるものの、基本的には公海は国連海洋法条約(UNCLOS)のBiodiversity Beyond National Jurisdiction (BBNJ) で扱うこととしている。そのため、COP10以降には、EEEZを中心とした重要海域の特定のために各地域でEBSAワークショップが実施され、研究者によって各国の経済水域を含む形でEBSAが登録されている。

 日本においてもこうした動きと並行して、環境省主導で日本の重要海域をEBSAの基準にさらに典型性という基準を加えて検討された。日本においてはデータが密に利用できるために、専門家による評価や意見に先だってに、得られうる大量のデータに基づきすべての基準を考慮した最適化手法によって、機械的に重要海域抽出を行なうなど、いくつか先進的な取り組みもなされた。その結果の一部は、EBSA東アジア地域ワークショップへの日本側の研究者からのEBSAの提案にも反映された。

 だた、情報の不足や専門家による意見の影響はあり、たとえば九州ーパラオ海嶺は環境省の重要海域では数か所が指定されているだけですが(他は領海外でしたっけ?)、CBDのEBSA 地域WSでは全域が入れられています。


日本近海の状況についてはMPAとともに以下にも短くまとめました。
http://d.hatena.ne.jp/yamakita-lab/20161016/1476872063

EBSAの7つの基準
1.唯一性、又は希少性
2.種の生活史における重要性
3.絶滅危惧種又は減少しつつある種の生育・生息地
4.脆弱性、感受性又は低回復性
5.生物学的生産性
6.生物学的多様性
7.自然性